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中部プラントサービスの取り組み 第10回

小さな当たり前が、人と地球にやさしい発電所をつくる

米子バイオマス発電所は、鳥取県米子市にある発電所で、木質のペレットやパーム椰子殻など、再生可能な有機性資源を用いた持続可能な電力供給を目指し2022年4月に運転を開始した。中部プラントサービスは、この発電所を運営する米子バイオマス発電合同会社のもとで、O&M(Operation & Maintenance)を担当。発電所の安定的かつ効率の良い運転を維持実現するために活躍する豊田好伸さん(画像右)と青山周平さん(画像左)にお話を伺った。

トラブルはじわじわと起きる
通常と異常の見極めを探る

豊田さん、青山さんが担当しているO&Mはその名の通り発電所の「運転」と「保守」を行う事業。貯めておくことができない電気は、入念に練られた発電計画にしたがって、確実に発電していく必要がある。O&Mスタッフは、発電所の安全・安定運転のため中央制御室内で発電状況をチェックし異常がないか監視しつつ、必要に応じて発電出力の調整や、発電所の起動停止操作を担当する。また、発電所内にあるそれぞれの設備や計器が正しく動作しているかを確認する巡視点検も重要な業務だ。保守の面では、点検手法のマニュアルに則り、設備を点検し消耗品の交換などを実施するほか、大規模な修理が必要となる故障が発生した場合は、運営会社とともに保修にあたる。

豊田さんはもともと現場の保守担当として中部プラントサービスに入社。その後、数々の発電所での仕事を経て、米子バイオマス発電所に赴任した。これまでは現場一筋であった仕事から一転、机上でのデータ分析を行う運転管理の仕事を選んだ理由とは?

「中部プラントサービス初の域外でのO&M事業ということで、自分で志願したんです。バイオマスというこれからの持続可能な未来のために必要とされる発電方式、しかも新規に立ち上げる発電所という仕事に魅力と可能性を感じました。もちろん、苦労することも少なくはありません。米子バイオのボイラーはオーストリア製、タービンはドイツ製ですので、それを扱うメーカーの担当者や技師は当然外国人。立ち上げ時には仕様書も完全に日本語になっているわけではなかったので、通訳を介しながら設備について学んでいきました。おかげで、英語力が身につきましたよ」

「設備保守の仕事からデータの確認と解析という運転にかかわる仕事に移って、特に強く感じるのは“トラブルはじわじわと起こる”ということ。現場で設備を点検したり保修したりする際は、保修箇所が既にあるわけです。その反面、データ分析の段階は計器から送られてくる信号を読み解かなければなりません。例えば、詰まった配管は排水されていないので見ればわかりますが、24時間安定して運転し続けなくてはならない発電所では、詰まりそうな配管を事前にデータから察知して対処しなくてはならない。しかもこうした設備の信号は、長期間にわたって徐々に変化しますから、どのレベルならば対処が必要なのかを見極めるのには、神経を使いますし、また今以上に知識をつけなくてはならないと感じますね」

突発的な状況に備えるために 今できることに最善を尽くす

青山さんも豊田さんと同じく、主にデータの確認と分析にあたるスタッフ。青山さんの場合は、米子に来て毎日の天気予報を注意深く見るようになったという。

「発電所は事前の発電計画に従って発電を行っています。私たち運転管理のスタッフはデータを解析する上で、この発電計画と実際の運転状況を突き合わせて、報告書などを作成します。当然、計画通りに発電ができるのが最も良いのですが、発電量は外気温や突発的な事態によっても異なってきますので、なかなか予定通りにはいきません」

「私が経験した中で、最も印象深く残っているのは発電所と連係する送電線に落雷があった時のこと。こうした設備に落雷などがあって送電ができなくなった場合、速やかに保護装置が働くので大きな問題にはつながりませんが、それでも状況を確認した際に、設備へ負荷を下げるための保護装置が動作した時は、“急いで適切な対処を行わねば”と気が引き締まりました。また、この発電所は米子の境港付近という日本海に面した地域にありますので、これから迎える厳冬期には配管の凍結なども考えられるでしょう。どんなに知識をつけ、データを読み取る努力をしても、自然の力は容易に予測することはできません。それでも、発電所という地域の人々の生活を支える重要な施設を止めるわけにはいきませんからね。米子に来て、毎日天気予報は入念にチェックする習慣がつきましたよ」

豊かな海と自然に囲まれた
米子の町と人々のために

愛知から米子へ。大きく環境が変わる中でも豊田さんと青山さんは「毎日が楽しい」とはなす。
青山さんが気に入っているのはその環境の良さ。
「境港という、日本海側有数の港がありますからね。休みの日に漁港近くまで出掛けて食べる新鮮な魚介は格別です。それに町並みも趣があって、のんびりしていますから仕事のリフレッシュにも最適です。」

豊田さんは米子の人々の人当たりの良さが気に入ったという。 「現在、運転管理の業務は3人体制の4班。この4班の交代制で24時間休まず管理を行います。各班に米子で採用したスタッフがいるのですが、とても優秀で仲間として本当に信頼できますね。休みの日に一緒に過ごすこともありますよ」

2022年4月に運転を開始した米子バイオマス発電所。そこで働くスタッフもまた、絆を深めあいながら安全運転のための、堅実なスクラムを組みつつある。

青山さんはいう。「目に見える問題よりも、目に見えない問題の方が怖いですよ。大きな事故の多くは、小さなトラブルの積み重ねによって起こることが多いんです。だから、仕事に慣れても、常に初心を忘れず万一に備え続けることが大事です。発電所の運転は失敗が許されないですからね」

豊田さんは「私は、発電設備の操作を行うオペレーターの育成も兼任しています。その中で重視しているのは、指差し確認と呼称。これは、作業の基礎の基礎ですが、これができていないことが大きな事故につながるんです。当たり前のことを、当たり前にできるようになることが、米子の人々の当たり前の暮らしを支えるんだと、私は信じています」

SDGsなどでも謳われる、持続可能な未来に向けた取り組み。バイオマス発電所が、真に人と環境に優しく、明るい未来をつくる場所であるように、豊田さん・青山さんはこれからも、自らの知識と技術を磨きながら、地道で必要不可欠な努力を続けていく。

豊田さん プロフィール

1993年入社 渥美事業所 電測課
2004年 渥美事業所 運営課(発電所運営業務受託)
2012年 ファイザー・ファーマ名古屋工場 派遣
2014年 碧南事業所 運転管理課
2019年 四日市バイオマス運転保修所
2021年 米子バイオマス運転保修所

青山さん プロフィール

2010年入社 碧南事業所 運転管理課
2016年 シャープ亀山運転保修所
2018年 碧南事業所 運転管理課
2019年 四日市バイオマス運転保修所
2021年 米子バイオマス運転保修所

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