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中部プラントサービスの取り組み 第5回

5年間の「現場・教育訓練」を経て溶接のエキスパートへ
資格を取得し大規模発電所設備から各種産業プラントまで幅広く対応

「溶接」とは大規模構造物や各種プラントから自動車、鉄道、船舶など幅広い分野で生かされる「つなぐ技術」。
ものづくりの世界にとって欠かせない基盤技術として、中部プラントサービスでは建設現場を中心にさまざまな「溶接」をおこなっている。
今回は、溶接競技会での入賞や難易度の高い資格取得、最前線の現場など個人で活躍する傍ら、指導者としても人材育成に努める、エンジニアリング本部溶接技術部に所属する萩さん(写真上・左)、中島さん(同写真・右)の二人に今までに培った「溶接技術」について話を伺った。

新しい時代にも目を向けながら
知識と技術を持った人材育成

「溶接技術」は被覆アーク溶接から始まり、工業製品の発展とともにティグ、マグ、ミグなどの溶接方法が現れ、近年ではこれらの溶接機もデジタル制御化が進み溶接性の向上や溶接管理も容易な機器が開発されている。また、更なる溶接方法としてレーザー等の溶接も開発され実用化されている。

現在の社会は、新エネルギーシステムの構築が進められている。これに必要となる“最新技術・難易度の高い技術を駆使したものづくり”に目を向け、いま注目の「水素社会」に対応する、高圧ガス保安法による高圧水素配管の溶接技術について聞いてみた。

萩さん プロフィール

1980年 工事部工務課 入社
1984年 工事部名古屋工場
1996年 火力総合事務所工事計画部名古屋工場 主務
2020年 エンジニアリング本部溶接技術部 マネジャー
「環境を整えて完成度を上げること。高度な溶接技術が品質を確保します」と話す萩さん

「次世代の水素自動車の燃料である水素は、充填圧力を上げることで走行距離を伸ばすことが可能になります。このため、次世代の水素ステーションでは、高圧水素ガスステーションが必要となります。この高圧水素ガスステーションを設置するにあたり、敷地等の有効活用を考えると少しでも小さいほうが有益になり、狭隘(きょうあい)部での溶接など高度な溶接技術が必要となります。さらに当社が取得した高圧水素配管の施工法では、従来よりも肉厚を薄くした特殊な配管の溶接を可能とし、この配管を使用することにより高圧水素ガスステーションの通常使用される太い配管が細い配管となり、継ぎ手もネジから溶接になることからコンパクト化、コストダウン、漏洩リスク削減、点検の簡易化等が可能となります」と話す萩さん。

「今は指導者としての意識が強い。全国競技会で優勝を狙いたいですね」と自身の賞状とメダルを手にする

次に、次代へつなぐ技術継承について聞いてみた。「溶接を指導するうえで大切にしていることは、わかりやすく伝えること。溶接の微妙なニュアンスを実際に見せながら、言葉でも伝えるよう心がけています」 溶接は、溶接指示書に基づいて実施するが、現場では溶接指示書を作る時など溶接士が相談を受けるケースもあり、現場の状況や資料を見て材質・流体・温度などから溶接棒の選定を行うなど知識が必要になる。溶接士は複数人で行動することが少なく、現場で一人の溶接士として技術も判断力も磨くことが必至だ。 「もう一つは、環境を整えれば成果物の完成度を上げることができるということ。技術に差はあれど、作業環境を整えることは経験にかかわらずできることです」高度な溶接品質は、こうした積み上げから生まれ、自身の技術向上のみならず新しい時代にも対応できる、必要な知識を兼ね備えた人材育成へとつながってゆく。

「溶接管理プロセス認証」を取得し 品質や環境、お客さまにもメリットを

電気事業法で管理される火力発電所ボイラ耐圧部やガス事業法のLNG設備ガス配管など高度な溶接技術を必要とする環境で、研鑽を重ねた技で得た2013年度全国溶接技術競技会・被覆アーク溶接最優秀賞受賞から、自身の技術を伝承すべく若年者の育成まで取り組まれている中島さんに溶接における品質等の管理について聞いてみた。

中島さん プロフィール

2004年 直営技術部名古屋工場 入社
2017年 技術本部溶接センター 主任
2020年 エンジニアリング本部溶接技術部 主任
中島さんは全国競技会での優勝や厚生労働大臣表彰を受賞するなど溶接のエキスパート

「当社では溶接の対象物が発電所や工場にある機器や構造物であり、作業環境は屋外が多いことから、『移動・設置・設定』が容易であり作業性や高い溶接品質を確保しやすいティグ溶接機を主に使用しています」と話す中島さん。
溶接作業の現場管理業務は、「溶接設備、溶接士、材料、溶接部の開先形状などについて当初計画の設計図書と同一であるかを確認するとともに記録を残し、品質管理も徹底している」という。

JIS溶接技術認定、JPI溶接士技量認定、電気事業法溶接技術認定のほかにも、ボイラ溶接士(普通)や溶接管理技術者2級(WES)などの資格も取得している(中島さん)

溶接の品質を確保するには、次のようなことが守られている。

  • 適切な材料および適切な溶接方法の選定
  • 母材、溶接法に適した溶接材料の選定ならびに適切な乾燥保管
  • 適切な溶接姿勢および開先形状の選定。また開先精度の確保
  • 溶接施工環境(気温、湿度、風、雨、狭隘(きょうあい)(狭い)等)への対策
  • 溶接士の教育と適正配置

さらに技術面では「電流値の範囲など溶接条件に基づく溶接機の設定やティグ溶接時のトーチの角度とシールドガスの流れ状況などに気をつけています」と話す。

新入社員から溶接士の育成および小修理用の溶接ブースと溶接教育用資料の作成

溶接品質におけるマネージメントシステムでは、「溶接技術部では電気事業法対象配管の施工に必要な溶接施工管理要領、溶接設備管理要領などの各種要領(10件程度)を定めています。代表する溶接施工管理要領では溶接方法、母材・溶接材料の選定から施工・検査まで定め、作業工程を連続的に監視および管理することにより品質の確保を図ります。このほかにも、品質保証部では溶接施工工場として溶接事業者検査実施要領なども定めています」と話す。 溶接施工計画は、製品に対する母材、施工条件、施工数量を確認した後に溶接施工法や溶接条件を決める。管理ポイントは、溶接品質におけるマネージメントシステムで決められた内容に基づき管理するなかで、さらに安全・品質・日程・納期・コストにも注視し管理していく。管理のホールドポイントである、各工程の検査について社内で力量評価された自主検査員が自ら確認記録する流れだ。

溶接技術部には15人が所属。うち12人が5年計画の「現場・教育訓練」を終了し即戦力としてお客さまをサポートする

最後に、「溶接技術」における中部プラントサービスの強みを聞いてみた。 「電気事業法・原子炉等規制法・ボイラ耐圧部・高圧ガス保安法の溶接について、溶接施工法や溶接士の認定・承認を取得しています。この認定は、火力・原子力発電所やガスプラントの重要部分を溶接するのに必要な資格となります。また、お客さまが当社のような溶接管理プロセス認証を取得している溶接施工工場を選定することで、溶接事業者検査への民間製品認証の活用が可能となり溶接事業者検査の場合、施工前、施工中、施工後の各工程における実施内容が、簡素化または省略され繁忙感と労力が大幅に削減されます」

5年計画で実施される「現場・教育訓練」では、技術力向上とモチベーションアップを目的に溶接競技会などにも毎年出場し、実技と資格の両面を習得させている。そうして身につけた「溶接技術」で事業領域を広げ、さまざまなお客さまのニーズに応える。6年目からは、プロとして多様な溶接作業に取り組む傍ら、技術研鑽し溶接のエキスパートへ一歩ずつ近づいていく。

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