中部プラントサービスの取り組み 第6回
今日と同じ安定を未来へ。
上越火力発電所保修スタッフが語る「安定運転を支える使命と責任」
上越火力発電所は新潟県上越市、直江津港荒浜埠頭に2012年に建設された発電所。同発電所は、2019年より東京電力と中部電力の共同出資によって立ち上げられた発電会社JERAが運営を継承しており、中部プラントサービスではこの発電所において、保守・点検を担っている。
主に長野方面の電力需要に応え、雪深い上越においても安定した電力を届けるため、日夜発電所設備の安定運転を守り続けるために奔走する工事本部 名古屋総合事務所 上越保修所所属の高橋慶之さん(写真上・右)と吉原雄大さん(同写真・左)にお話を伺った。
突発的に起こる火力発電所の設備不具合に
いち早く対処し、安定運転を維持するために
高橋さんの担当は、主にボイラ設備関係の定期点検および経常保修工事。
新潟出身、中部プラントサービスの名古屋総合事務所で技術を磨いた後に再び管下の保修所である上越保修所へと戻った。名古屋とは違う、都市部から遠く離れた直江津港において、保守・点検の責務を適切に行い続けるための取り組みについて尋ねた。
高橋さん プロフィール
2011年入社 | 人材開発センター |
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2011年 | 火力本部 新名古屋事業所 機械課 |
2018年 | 現:工事本部 名古屋総合事務所 上越保修所 |
「保守・点検には大別して2種類あります。JERA様から不具合の対応依頼を受けてから行う作業(事後保全)と、不具合が発生しやすい箇所の傾向をこちらで見定めて先読みをしながら提案する作業(予防保全)です。
特にボイラ設備関係では、ボイラ内部のインナーケーシングが運転時の熱に耐えきれずに不具合が発生することがよくあります。そうなると高温の排ガスが外部に漏れて不具合箇所が赤熱するなど危険な状態となります。不具合の保修に際しては一旦設備を止めて行うのですが、電気をお使いいただいている人々の電力安定供給を担う火力発電所を長期間止めるわけにはいきません。
とはいえ、上越の周辺は都市部から遠いため、保修に必要な資材調達も一苦労。メーカ製品を頼んでいては遠方からの運搬に時間的なロスが生じます。火力発電所を早期に稼働させるためには、できる限り近場で同等品質の資材を調達し、迅速に保修作業を終え、安定運転に寄与することが求められます。
上越保修所は少数精鋭の組織で構成され、一人ひとりが管理・対応する設備の幅も広いため、かえってこの状況が技術者レベル向上につながり人材を育てているのです。
先ほどの資材の調達や突発的な保修作業対応についても、私たち技術者と協力会社が連携・協調し技術を合わせることでスピーディーに対応できるのが強みです。
作業着手前にJERA様と調整した保修予定期間よりも早く作業が終わることも少なくありません。そういった時は、やはり技術者冥利に尽きます」
積雪1.5m。
上越火力発電所の冬は雪との戦い
「降雪の多い年では、1.5m以上積もることがあるので、雪が降り始める前に対策しておくことが必須。特に屋根に積もった雪が溶けて落下することで、地上に設置している計器が破損し、運転に支障をきたすことがもっとも危惧されることです。そのため11月ごろから計器周りには足場材を使った落雪養生を行っています」
「雪が積もった後、いろいろと苦労は多いのですが、やはり1番は除雪です。
上越火力発電所の設備は広大で、資材や道具などが各倉庫に点在しています。雪が降った翌日は、倉庫までの道の雪をスコップや小型の除雪車を使って取り除いて行くのですが、これが非常に重労働。状況によっては、まず除雪するための道具を取りに行くための除雪が必要になることもあります。
それでも、火力発電所で働く者は、突発的な不具合には即時対応していくことが使命ですから、除雪も大切な仕事の一環だと考えています」
大きな仕事ではないからこそ徹底して、地道に。
私たちの「当たり前」が安定運転を支えている。
火力発電所では、設備の効率的な稼働や安定運転に欠かせない水質の管理や、排煙濃度などを数多く計測している。
吉原さんは、こうした各種計器の点検・保守を行うことで発電所の安定運転を支えている。そのポリシーは「裏方として寄与することに誇りを持つ」ことであるという。
吉原さん プロフィール
2007年入社 | 直営技術部 電気グループ |
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2008年 | 火力本部 新名古屋事業所 電気・計測課 |
2015年 | 現:工事本部 名古屋総合事務所 上越保修所 |
「火力発電所のユニットを安定運転するうえで重要となるボイラ水のpH値などを計測する計器の調整は特に気を使います。計器の異常を見落としてpH値が正しい値を計測しなければ、ユニットがトリップすることもあり得ます。そのほかにも、私が扱うものの中には復水器の監視計器をはじめ、計測不可になれば即座に安定運転がストップするような計器が数多くあります」
「もちろん、不具合を未然に防ぐために私たちがいて、さらに何重もの安全施策を取っているのですが、それでも毎日計器を確認するときは気持ちが引き締まります。 目立つ仕事ではありません。むしろ火力発電所全体から見れば、小さな仕事かもしれません。しかし、私たちのような技術者の小さな仕事の積み重ねが、火力発電所の安定運転を支えているのです。 華々しくなくとも地道に1つ1つの仕事を行うことで、多くの人に安定した電力を届け、安全・安心な暮らしを守る裏方として寄与していることに、私は誇りを感じています」
経験と技術を積み重ね
伝承していくことで、より高い品質と安全を目指す
「中部プラントは複数の火力発電所で保修を手がけていますから、技術者たちの経験の豊富さや技術力が高いのが強みですね。私も、名古屋から上越に移ったときは、LNGタンクやガス精製のための設備の扱い方、さらにガスタービン(GT)や蒸気タービン(ST)の配置や計器の違いなどに当初は戸惑いましたが、1週間もするとその仕様に慣れることができました。これも過去の経験と社員同士の知識共有を図るコミュニケーション力によるところが大きいでしょう」
「私たちの仕事の知識や技術は、1人の人間で完結して良いものではありません。現在の安定運転を、これからも続けていくために技術と情報を共有し、技術を伝承していくことが大切です。私のこれからの課題は、そうした技術伝承をいかにしていくか。これまでは何より現場を重視していたので、デスクワークにはなかなか慣れませんが、今は施工要領書の作成や「Know Whyシート」の作成にも積極的に取り組んでいます」
インタビューを通して、ふたりの口からは何度も「安定運転を支える使命と責任」が語られた。彼らから感じられたのは、新しい挑戦や大きな改革が求められるなかでも、まずは今できること、品質と安全につながる道を地道に、そして堅実に築いていく日々の努力に重点を置くことの、自信と誇り。 止めることの許されない火力発電所、人々の暮らしに灯る明かりを絶やさないために、明日も今日と同じ安心と品質があるように。 上越火力発電所のスタッフは、この地道なルーティンが人々の暮らしに明かりを灯し、確かな未来を築いていくと信じ、誇りをもって続けていく。