中部プラントサービスの取り組み 第7回
約半世紀にわたり技術で信頼を築く
お客さまが理想とする「パートナー企業」をめざす
1975年(昭和50年)、愛知県知多市の臨海工業地帯で操業を開始した「出光興産愛知製油所」。その当時、中部電力の発電所の業務を中心にしていた中部プラントサービスが、どうやって製油所のメンテナンスに第一歩を踏み出せたのか。また、初めての受注から現在に至るまで、どのような経緯をたどってきたのか。今回は、お客さまである「出光興産愛知製油所」さまの視点で中部プラントサービスの技術力や作業員の姿勢など評価を交えていろいろ聞いてみた。
当初大型SDM※で監督50人程度の体制から
今では約300人規模にまで
※SDM・・・Shut Down Maintenance 装置を全停止して実施するメンテナンス
まず、中部プラントサービスへ発注するきっかけになったことを教えていただけますか?
「はい。ずいぶん昔の話になりますが、昭和47年に桟橋用ドルフィン工事を他社に施工依頼していました。その鋼管杭溶接におけるX線検査でどうしても2級以上の合格ができなかったんです。ほとんどの会社が対応に苦慮していたなか、他社の協力会社として工事に従事していただいていた中部プラントサービスから弊社に申し出をいただきお願いしたところ、ほとんどのX線検査を1級で合格し完了したのがきっかけです。厳しい判定基準をクリアしたことで、中部プラントサービスへの技術力の信頼度が高まると同時に高度な溶接技術者が多数いることを知り驚きました」
この出来事を機に、出光興産の冷却水埋設工事などが発注されたわけですね。
「そうですね。桟橋用ドルフィン工事のことがなければ、発注するのに時間がかかったと思います。X線検査は溶接の品質チェックです。規定を満たすまではつぎの作業に進められません。1級合格の評価は、出光興産や協力企業に『信頼させる品質』を感じさせてくれました。日常的に配管やボイラーなど多くの場面で培った、中部プラントサービスの溶接技術が生かされた事例ではないでしょうか。今では溶接資格が増え、ボイラー溶接士として資格取得者も多い。それが『中部プラントサービスの特徴』と言えます」
大型SDMを含む「石油プラント日常メンテナンス」は4年ごとにおこなわれますが、発注先にはどのようなことを求めるのでしょうか?
「弊社では、約2か月間の短期工事で『安全・品質・コスト』を軸におこなわれます。コストにかかわる工程、具体的なメンテナンスの手順、安全対策などが中部プラントサービスから提案されます。緻密な施工図面では弊社の気づかないところが顕在化したり、コストダウンを意識した設備の耐久性や寿命を考慮した使い方の提案もいただきます。
新しいしくみや改善などが盛り込まれた提案の積み重ねにより、昭和50年に初めて発注したときの監督50人程度の体制が、今では約300人規模の発注につながっています」
日常保全メンテナンスの約10倍の人手をかけたSDM工事での仕事ぶりについてはいかがでしょうか?
「長い関係のなかで多くの実績を積んできた中部プラントサービスだけに、弊社のことをよく理解しています。要望にはスピード感があり、とても助かります。平成初期より、大きな発注は技術的にも安心で、人材も豊富な中部プラントサービスにお願いすることが多くなりました」
スチームや電力などを扱う“ユーティリティ”と呼ばれる用役設備を委託していますが、所内用ボイラーなどの工事で「中部プラントサービスの強み」を感じた点を教えていただけますか?
「中部プラントサービスは、中部電力グループとして発電所のボイラーなどの点検や補修をしてこられましたが、弊社のような製油所の仕事は少し内容が違うので戸惑いはあったと思います。作業をしながら指導させていただいたときもあります。ただ、技術的な内容は時間が解決することがほとんどでした。『コスト・品質・安全』を考え抜いてきた中部プラントサービスの施工方法は『短期間で補修や改修などが完了できるのか』という不安を解決してくれるものです。それは『経験に基づいた強みのひとつ」だと考えています」
「重油流動接触分解装置(RFCC)」本体SDMを初めて発注していますが、決め手になったことは何でしょうか?
「何度もくり返しになりますが、やはりメンテナンスでの実績が決め手ですね。ただ、初めての仕事なので当然、わからない点などが出てきます。そのようなときは、早く習得してもらうために、現場で学び覚えていただくようにしています」
主要精製装置を含むメジャーSDMを発注し、大規模工事が完了するまでに工程の中で信頼関係が築けた理由は何でしょうか?
「安全・品質・コスト・工程をみるかぎり、弊社の求めるものに対して、中部プラントサービス社内で徹底した努力をされています。そうやってコツコツと積み上げてきた結果、信頼関係が築けていると思います。また、設備的な問題において初めての故障などが発生した場合、いかに早く修理工程を調整できるかが重要になります。このときの作業員の熱意ある対応や、前向きな姿勢での意見交換など、解決に向け一緒になって考えてもらえるところも、信頼関係を構築するうえで、欠かせない要素だと思います」
愛知石油製油所の調達方針により、エリア別メンテナンスに変更しメジャーSDMを発注したのは、これまでとは違う視点からなのでしょうか?
「もともとは『競争引き合い』でしたが、実績を評価して数社しか登録されていない『特命発注』に変更しました。これは発注先の決定に時間をかけず、早期に工事着手ができるのがメリットです」
現在は出光興産千葉の潤滑油1課SDM、製油2課SDMから発注されていますが、今後の期待を込めて「中部プラントサービス」への要望は何かありますか?
「はい。できれば、もう少しコストを安く(笑)。というのは冗談ですが、一般的な要望とすれば、工事品質の向上や管理、施工ミスがないように取り組んでほしい。人材の育成への期待もありますが、今いる中部プラントサービスの作業員からは『なんとか期待に応えたい』という気持ちが伝わってきます。大きな規模で発注しているだけの実力があります。はっきり言って、そのような人材じゃないと発注もしにくいですよ」
他社と比較して、中部プラントサービスの社員教育や企業方針が一貫してあらわれる傾向は何かありますか?
「比較的、元気な人が多い。早く仕事を吸収したいという心構えで取り組んでくれています。不測の事態も含めて24時間対応ですが、大小の故障にかかわらず、いつでも態度を変えずに熱心に対処してくれます。それから、中部プラントサービスの現場監督は30代前半の若い人が目立ち、エネルギッシュなイメージもありますね」
環境貢献に役立つ取り組みを発注先ともおこなっていますか?
「排ガス規制などの対策は、設備が正常に稼働していれば環境は守られます。設備の補修や取り替えなど、適宜メンテンナスをおこなう中部プラントサービスも大きく寄与しています」
お客さまの【出光興産愛知製油所】とは…
国内で最後に建設された製油所で、開始当時の原油処理能力は1日約13万バレル。現在では約1日約16万バレルを誇る。敷地面積はナゴヤドーム約43個分、70社以上(協力会社含む)の人たちが各所の仕事に携わる。原油は常圧蒸留装置により、LPG、ナフサ、灯油、軽油、重油に分離される。ガソリン、軽油、灯油の製品は、製油所から直接サービスステーションに出荷されるなど、中部のエネルギー供給基地として私たちの暮らし、地域社会を支えている。
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