中部プラントサービスの取り組み
第14回 第68回澁澤賞を受賞した、現場での実践が生んだメンテナンス手法

中部プラントサービスでは、数多くの発電設備やプラントのメンテナンスを手掛けています。
その多岐にわたる設備の安全と安定した稼働、また安全な作業を維持するために、従業員を含めた現場関係者はその設備の特徴や使われ方、現場の環境を考慮しながら最適なメンテナンス方法を模索し、新しいメンテナンスの道具・器具を開発することもあります。
そのような中で開発を手掛けた社員の一人、中村浩之さんが2023年に、電気保安に優れた業績を上げた人財やグループに贈られる「第68回 澁澤賞」を受賞しました。
今回は、同賞で評価された器具の特徴や、開発にかけた思いについて、中村さんに詳しく話を伺いました。

高所での作業をより効率的で安全にしたいという思いが生んだ治具

中村さんが開発したのは、「ガスタービン燃焼器取出し移送用吊治具および取出し移送方法」です。日本では導入件数の少ない「GE7HA型」と呼ばれる米国ゼネラル・エレクトリック(以下:GE)が開発したガスタービンのメンテナンスに使用される治具です。
もともと、GEのメンテナンス治具や手法は存在していましたが、中村さんは実際のメンテナンス状況を見た上で、もっと安全で効率的な作業ができないかと思い、試行錯誤の上、新治具とメンテナンス手法を新たに開発しました。

中村:ガスタービンGE7HA型は、(株)JERAの西名古屋火力発電所に導入されているガスタービンです。GE7HA型は高効率なガスタービンですが、燃焼器具部分が非常に高温となるため、金属劣化が起きることが懸念され、定期的なメンテナンス・交換が必要でした。
しかしながら、燃焼器1缶の重量は約500kgと非常に重く、また従来の分解・メンテナンスの装置を設置するためにはガスタービンの下からアプローチをした上で、高所での足場の掛け替えや作業床の取り付け・取り外しが数回必要でした。

中村:この足場の掛け替えや作業床の取り付け・取り外しによる作業を軽減し、メンテナンスをより安全で効率的なものに変えるために開発したのが今回の治具です。
この治具を使用することで、ガスタービンの上部から作業のためのアプローチが容易にできるようになり、作業床の掛け替えが不要となったことで作業が大幅に削減されました。さらに燃焼器の分解と取り出し、移動、組み立てをノンストップで行えるようになりました。
これにより安全な作業が確立でき、効率的な工法となることでメンテナンスにおける作業日数は2日程度の短縮が可能となりました。

(左図)従来のメンテナンス方法。作業を行うたびに作業床を設置し、仮設の足場を組み、さらに高い位置からタービンの分解・取り出しを行った上で、作業床の撤去を行わなくてはならない。
(右図)中村さんの考案した治具を用いたメンテナンス方法。仮設足場を設ける必要がないため、作業床の常設が可能になった。さらに、高所に登ることなく作業床上で作業ができるようになった。

手探りの中で進めた開発

中村:私自身も、このタービンのメンテナンスを行うスタッフでした。従来の工法に改善の必要性を感じていましたし、もちろん(株)JERAも同じようにより効率的な工法を求めていましたので、私は現場のスタッフと(株)JERAと話し合いを重ねて、治具の開発を進めていきました。
しかし、西名古屋火力発電所に導入されたこのガスタービンは、世界初であり、メンテナンスにおける過去の事例の集積もなく、メーカーからの情報の開示も十分とは言えない状況でした。こうした情報の少ない中で役に立ったのは、何より現場の経験です。

中村:今まで経験した他の発電所におけるガスタービンのメンテナンスと西名古屋火力発電所の現場環境から燃焼器の取り付け・取り外し方法を模索し、その経験を治具開発に落とし込んでいきました。もちろん、この開発と改善は私一人で完結したわけではありません。私のアイデアを再現し、形にしてくれた協力会社の皆さん、なにより(株)JERAが、独自に治具を開発することを認めてくださったからこそ、安全で効率的なメンテナンス治具の開発が実現できたのです。

より良いメンテナンスを目指して考え続ける当社のスタッフ

中村:私と現場のスタッフ、そして協力会社が一丸となって取り組んだ改善策は、澁澤賞という形で大きな評価を獲得することができました。これは当社で行われている数々の改善策の一つに過ぎません。
中部プラントサービスは、全国各地で多くの発電設備やプラントのメンテナンスを手掛けており、その各所で働いているスタッフは、小さな改善から、これまでにない全く新しい器具を生み出すといった大きな改善まで、日々の仕事で感じた改善案を自分の持ち場において日々検討し続けています。
こうして生み出された改善策の数々は、同じ現場で働くスタッフの間に共有され、さらに他の現場にも応用できると判断された際には、社内全体へと共有されていきます。

中部プラントサービスの従業員にとって、様々な安全性、品質性向上と効率的な運用に伴う改善は不可欠なものなのです。その中でも現場を知り、実践の中で磨かれた改善は当社の強みの一つでもあり、お客さまからの信頼を勝ち得るための大切な要素として未来に向けた進歩へつながると考えています。
私もこれから、さらに多くの経験をすることになるでしょう。その中でさらなる設備や手法の開発を通して、多くの現場とスタッフの安全と効率化を実現していきたいと思います。

中村 浩之さん プロフィール

1995年入社 知多第二事業所 機械課
2009年 火力本部新名古屋事業所機械課 主任
2014年 火力本部新名古屋事業所機械課 主務
2017年 工事本部工事総括部 主務
2018年 工事本部三重総合事務所西名古屋事業所技術課 リーダー
2023年 第68回 澁澤賞受賞
2024年 保全部 出光興産千葉保修所 チーフリーダー